佐橋佳幸のギターから始まる
全員で歌う番組テーマ曲「この日のこと」のあと、一本のアコースティックギターが鳴ります。藤井フミヤ「TRUE LOVE」のイントロです。弾いているのは、この曲の編曲を手がけた佐橋佳幸。別の奏者による再現ではなく、1993年の作品を形にした本人のギターが、21組34名の大メドレーへ扉を開きます。
ここが熱いのは、有名なイントロが聞こえるからだけではありません。「TRUE LOVE」という一作品に残る藤井フミヤと佐橋の制作関係が、そのまま2009年のステージへ持ち込まれ、そこから34人の声へ広がるからです。
22分50秒に、22曲をつなぐ
「22'50"」は、短い曲を並べただけのダイジェストではありません。小田和正と20組の歌唱ゲスト、計21組34名が集まり、それぞれの代表曲を全員で支えながら歌いつないだ大メドレーです。
「TRUE LOVE」に続いて、スターダスト☆レビュー「今夜だけきっと」、広瀬香美「ロマンスの神様」へ進みます。一人の持ち歌が終わるたびに関係が切れるのではなく、次の歌へ声が受け渡されていきます。
ハイタッチで、次の歌へ渡す
その受け渡しは、編曲の中だけにあるのではありません。自分のパートを歌い終えた人が、次に中央へ出る歌い手とハイタッチする。歌が切り替わるたび、代表曲を手渡すような動作が繰り返されます。
もう一つ大切なのは、21組を21人の代表ボーカルに置き換えていないことです。たとえばスターダスト☆レビューもAqua Timezも、ボーカルだけを送り出したのではありません。バンドやユニットのメンバー全員が歌い手としてその場に残り、自分たちの曲以外でもコーラスを担います。
「21組34名」という数は、名義を並べた宣伝文句ではありません。一曲を歌い終えてもステージから降りず、次の人の歌を支える。その34人分の声と動きが、22曲を一つの演奏にしています。
「小委員会」から、委員会バンドへ
これだけの人数で歌をつなぐ計画は、小田和正一人で組み立てたものではありません。「22'50"」を実現するため、小田は根本要、スキマスイッチの大橋卓弥と常田真太郎、いきものがかりの水野良樹と「小委員会」を作り、メドレーの形を検討しました。
この5人は、小田和正(AG・Vo.)、根本要(AG・EG・Vo.)、大橋卓弥(AG・Vo.)、常田真太郎(Key.・Vo.)、水野良樹(AG・Vo.)という編成です。相談するために集まった顔ぶれは、のちに小田が名付けた「委員会バンド」として実際に演奏するユニットになります。
TBSは2017年の放送でも、委員会バンドを「小田と共に番組を支え続ける仲間たち」と紹介しています。「22'50"」は一度限りの大人数メドレーを生んだだけでなく、その後の『クリスマスの約束』の中心で選曲し、歌い、演奏する5人の関係も形にしました。
松たか子の「明日、春が来たら」へ
JUJUの「明日がくるなら」に続く6曲目は、松たか子の「明日、春が来たら」です。おとたどりでは、松の作品を佐橋佳幸の編曲・プロデュースから辿ってきました。ここでは制作クレジットとは別に、松自身が一人の歌い手として大勢の声の中へ入ります。
公式商品情報の2009年版ゲスト欄には松たか子が掲載されています。佐橋佳幸は歌唱ゲストとは別に、バックバンドのギタリストとして参加しています。
佐藤竹善の「La La La」
8曲目の「La La La」を受け持つのは、SING LIKE TALKINGの佐藤竹善です。ここはSkoop On Somebody名義の参加ではありません。
このイベントに残る参加記録は、佐藤竹善個人へ結びます。既存記事にある別の制作・共演関係とは混ぜず、「22'50"」で実際に歌った人をそのまま記録します。
全員で支える、異なる22曲
中盤にはCrystal Kay「恋におちたら」、AI「Story」、鈴木雅之「夢で逢えたら」、一青窈「ハナミズキ」、山本潤子「翼をください」が並びます。清水翔太「HOME」から小田和正「YES-YES-YES」へ進み、キマグレン、Aqua Timez、スキマスイッチ、平原綾香、夏川りみ、財津和夫へと声が渡ります。
最後は、いきものがかり「帰りたくなったよ」。世代もグループの形も違う21組が、一人ずつ自分の歌だけを披露するのではなく、ほかの人の歌に残り続けたことが、このメドレーの核です。
一本の線では表せない共演
この場に立った全員を、根拠のない「親しい関係」で結ぶことはできません。確認できるのは、同じ番組の同じメドレーへ参加し、22曲を歌いつないだというイベント単位の共演です。
松たか子から佐橋佳幸との制作へ、佐藤竹善から過去の作品や共演へ進むことはできます。しかし、その別々の関係を混ぜずに「22'50"」へ重ねることで、作品とイベントの両方から音楽のつながりを辿れます。