2004年11月23日、Coccoと岸田繁を中心にしたシングルが発売されました。名義は「こっこちゃんとしげるくん」。曲名は「SING A SONG~NO MUSIC, NO LOVE LIFE~」です。

くるりの岸田をプロデューサーに迎え、Coccoが以前の自分の歌を作り直す。その一曲には、翌年SINGER SONGERとして作品を発表する五人が、すでに集まっていました。その前には、もう一つの歌での録音共演がありました。二人のつながりを、2003年の「Heaven's hell」からたどってみます。

「Heaven's hell」で重なった歌とギター

「SING A SONG」の共同制作に先立つ2003年12月24日、Coccoの映像作品『Heaven's hell』が発売されました。その初回特典CDの2曲目に収められた「Heaven's hell(Tokyo solo recording version)」に、岸田はギターで参加しています。

これは、沖縄でのライブ音源とは別の録音です。くるりの公式ディスコグラフィは、岸田の参加をこの東京録音版のギターとして明記しています。

Coccoの歌に、岸田がギターで加わる。翌2004年の「SING A SONG」では、岸田は演奏に加えてプロデュースも担うことになります。二人の共演は、五人が集まるシングルより前の録音にも残っているのです。

英語の歌を、日本語でもう一度

この曲には、共同制作より前の姿があります。1996年、タワーレコードのbounce recordsから発売されたCoccoのインディーズ盤に入っていた「SING A SONG~NO MUSIC, NO LIFE~」。もともとは英語詞の歌でした。

それを八年後、タワーレコード創立25周年のテーマソングとして、日本語詞でリメイクします。そこでプロデュースを担ったのが岸田です。Coccoは歌うだけでなく、ジャケットのデザインも手がけました。

新しい題名には、以前の曲名になかった「LOVE」が加わっています。当時のタワーレコードの発表は、Coccoが加えたこの言葉を、音楽ファンへ向けたメッセージとして紹介しています。

同じ歌を、別の言葉と、別の人たちの演奏で作り直す。「こっこちゃんとしげるくん」は、Coccoの過去の曲を起点に、新しい共同制作の場になりました。

プロデューサーも、歌の輪の中にいる

岸田の役割は、制作をまとめることだけではありません。2004年版の「SING A SONG」では、アコースティックギターとアイリッシュ・ブズーキ、コーラスも担当しています。Coccoも、ボーカルとコーラスの両方で参加しました。

さらに、くるりの佐藤征史がベース、臺太郎がドラムとシェイカー、堀江博久がアコーディオンを担当。五人それぞれにコーラスのクレジットもあります。太田恵資のフィドル、新美香の追加コーラスも、この録音に加わりました。

発売時の公式資料には、岸田個人のプロデュースと並んで、Singer songerによるサウンドプロデュースが記されています。二人の名前を掲げたシングルの中に、五人のバンドで音を作る形が、すでに見えています。

SINGER SONGERの作品へ

翌2005年、Cocco、岸田、佐藤、堀江、臺の五人は、SINGER SONGERとして作品を発表します。レーベルの公式紹介でも、Coccoと岸田を中心に結成されたバンドとして、この顔ぶれが示されています。

5月25日に発売されたのが、シングル「初花凜々(しょかりんりん)」。続いて6月29日には、アルバム『ばらいろポップ』が発売されました。

アルバムの最初には「SING A SONG~NO MUSIC, NO LOVE LIFE~Album Edit」、最後には「初花凜々」が並びます。先の共同制作で生まれた歌が、新しいバンドのアルバムを開く曲になったのです。2004年のシングルとアルバム収録版は、表記上も分けてたどれます。

プロデューサーと歌い手として向き合いながら、同じ録音で楽器を弾き、声を重ねる。そこから五人のバンドの作品へ進む。Coccoと岸田のつながりは、二人だけの名前で始まった一曲を、仲間とともに育てていく過程にも残っています。

「Heaven's hell」の録音共演から、「SING A SONG」の2004年版、「初花凜々」、そして『ばらいろポップ』へ。順番にたどると、二人の共演が仲間との共同制作へ広がっていく道筋が見えてきます。