2025年10月12日、日本武道館。桑田佳祐が企画した「九段下フォーク・フェスティバル’25」に、桜井和寿がシークレットゲストとして登場した。二人が並んで歌ったのは、「ケンとメリー〜愛と風のように〜」「HANABI」「慕情」、そして「奇跡の地球(ほし)」だった。

主催者のTOKYO FMは、この再会を2006年「THE 夢人島 Fes.」以来19年ぶりの共演と伝えている。その間にも二人はそれぞれの音楽を続け、再び同じ曲で声を合わせた。この日の歌唱から、30年前に始まった共同作品と、その後の共演をたどってみたい。

1995年、「奇跡の地球」で重なった二つの名前

「奇跡の地球」は1995年1月23日、桑田佳祐&Mr.Children名義のチャリティーシングルとして発売された。作詞・作曲は桑田、英語補作詞はTommy Snyder、編曲は小林武史&Mr.Children。歌う二人に加えて、小林とバンドの名前が制作クレジットに並ぶ作品だ。

公式の活動記録によると、このシングルの収益は「Act Against AIDS基金」としてユニセフを通じたエイズ対策に充てられ、CDは1995年6月末までの限定生産だった。共同名義を掲げて歌を届け、その売り上げを支援につなげる。二組が一緒に作品を出した背景には、そうした目的があった。

同年には「LIVE UFO ’95」で共同公演も行われた。4月18日の名古屋から、東京、大阪へ。公式年表には3会場12公演の日程が残る。一枚のシングルにとどまらず、同じ舞台を重ねた年でもあった。

2001年、番組で向き合った「カラオケPRIDE対決」

次に見るのは、フジテレビの『桑田佳祐の音楽寅さん〜MUSIC TIGER〜』。2001年3月、桜井を迎えた2回の放送で「カラオケPRIDE対決」が行われた。

放送ライブラリーに登録された前編の曲目には「イノセントワールド」「みんなのうた」「今夜月の見える丘に」、後編には「傷だらけのローラ」「First Love」「be alive」が並ぶ。そして後編の概要には、リクエストで「奇跡の地球」を歌ったことも記されている。

共同作品を発表した二人が、今度はカラオケで対決する。ステージでの共演とは違う、番組ならではの顔合わせだ。それでも最後に二人の持ち歌が戻ってくるところに、この組み合わせの面白さがある。

なお、放送ライブラリーの登録日時は前編が3月16日23時30分、後編が3月24日0時。後編は3月23日深夜に当たる。収録日と放送日は区別している。

2006年のつま恋――互いの歌を歌う

2006年7月17日、桑田は「ap bank fes ’06」の最終日に出演した。桜井が歌とギターを担うBank Bandを軸に、ゲストを迎えるフェスだ。

当日の公式レポートによれば、桑田はかき氷屋の旗を付けた自転車で登場し、Mr.Childrenの「innocent world」を歌った。続く「いとしのエリー」では桜井とのデュエットに。桑田の曲を桜井が歌うだけでなく、桑田もMr.Childrenの曲を歌う、互いの持ち歌を行き来する共演だった。

レポートには、桑田が桜井のソングライター、シンガーとしての才能を称えたMCも記録されている。一方的に先輩を迎えるという関係だけでは見えない、歌い手同士の敬意が伝わる場面だ。

桑田の出演パートの最後には「奇跡の地球」が演奏された。この年の12月20日に発売されたライブDVDには、桑田の「innocent world」「希望の轍」「奇跡の地球」が収録されている。共演の記録を映像作品からたどれる場所でもある。

同じ夏の「THE 夢人島 Fes.」

その約一か月後、8月26日・27日には、静岡県浜松市の浜名湖ガーデンパークで「THE 夢人島 Fes.2006」が開催された。サザンオールスターズの公式年表は、桑田の呼び掛けにアーティストが応じて実現したイベントと説明している。

Mr.Childrenは27日のスペシャルゲストとして告知された。桜井がフェスのホストを務めるつま恋から、桑田が呼び掛けた浜名湖へ。同じ夏に、招く側と招かれる側の位置を変えて顔を合わせたことになる。

2025年のTOKYO FMの開催報告が、二人の前回の共演として挙げるのが、この「夢人島」だ。2006年の二つのフェスは、19年後の再会をたどるうえでも外せない接点になっている。

2025年の武道館、2026年のライブ音源へ

九段下の舞台で二人が歌ったのは、「奇跡の地球」だけではなかった。Mr.Childrenの「HANABI」にサザンの「慕情」、さらに二人で歌う「悲しくてやりきれない」。互いの曲と、先に生まれた歌を一緒に歌う選曲だった。

この日の「奇跡の地球」のライブ音源は、2026年10月21日にストリーミング限定で先行配信された。披露された2025年10月12日は桑田69歳、桜井55歳。その歌唱が、翌年に作品として届けられた。

同音源を収めるライブアルバム『九段下フォーク・フェスティバル’25』は、2026年11月3日にCDと配信でリリース。アナログ盤は12月16日発売予定と案内されている。1995年のシングルとは別に、再会した日の二人を聴ける作品だ。

共同名義のシングル、テレビでのカラオケ対決、互いのフェスへの出演、そして武道館。「奇跡の地球」は、その都度二人の間に戻ってきた。曲が生まれた時代から順にたどると、19年ぶりの共演も、重ねてきた具体的な歌の場面の先に見えてくる。