2025年10月12日、日本武道館。「九段下フォーク・フェスティバル’25」で、桑田佳祐と竹内まりやは、ビートルズの「Two Of Us」を二人で歌った。そのライブ音源は2026年10月28日に先行配信され、11月3日発売と発表されたライブアルバム『九段下フォーク・フェスティバル’25』にも収められる。

この共演をさかのぼると、二人だけでなく、山下達郎と原由子を含む4人の録音につながる。スタジオで重ねてきた声が、年月を経て、武道館でのデュエットへと続いている。

1978年にデビューした同期

竹内まりやは1978年11月25日、「戻っておいで・私の時間」と『BEGINNING』でデビュー。サザンオールスターズは、その年の6月25日に「勝手にシンドバッド」を発表した。竹内がインタビューで語る「同期」は、この二組のデビューを指している。桑田個人のソロデビューは1987年なので、ここは分けておきたい。

竹内は2014年の『TRAD』のインタビューでも、サザンと同期であることに触れている。単に同じ年に世に出たというだけでなく、一緒に録音し、普段も顔を合わせる音楽仲間として、その関係を話している。

「蒼氓」で重なった4人の声

4人の共演をたどる一曲が、山下達郎の「蒼氓(そうぼう)」だ。1988年10月19日発売のアルバム『僕の中の少年』に収録されたこの曲で、山下、竹内、桑田、原は声を合わせた。

この録音の記憶が、26年後、別の曲のコーラスを考えるときによみがえる。

一本のマイクを囲んだ「静かな伝説」

2014年7月23日に発売された竹内の「静かな伝説(レジェンド)」。竹内は曲の終わりを一人で録音したあと、「蒼氓」で4人が歌ったことを思い出し、桑田と原に参加を頼んだ。レーベル掲載の本人インタビューでは、メールを送る相手を「佳ちゃんと原坊」と呼んでいる。

録音では4人が一本のマイクを囲んだ。竹内によれば、桑田の声がよく通るため、桑田だけマイクから離れて歌ったという。長く歌ってきた仲間同士でも、実際に声を合わせながら距離を調整する。そんな録音の一場面が、本人の言葉で残っている。

HMVの同時期のインタビューには、もう少し日常に近い話もある。二組の夫妻は同じ年に結婚し、銀婚式も一緒に祝った。「静かな伝説」の歌入れの前日も4人で食事をし、遅くまで話し込んだあと、翌日の午後に録音したと竹内は振り返っている。

「仲のよい二組の夫妻」という紹介だけでは見えにくい、食事の続きに録音があるような親しさ。それを伝えるのが、この曲のエピソードだ。

武道館では、二人のデュエットと三人の共演に

2025年の「九段下フォーク・フェスティバル’25」で、竹内はシークレットゲストとして登場した。主催者の曲目表には、桑田との「元気を出して」「Two Of Us」「涙のキッス」が並び、その次に、原も加わった「静かな伝説(レジェンド)」が続く。

1988年と2014年の録音では4人、武道館の「静かな伝説」では竹内・桑田・原の3人。この日の曲目表に山下の出演はなく、過去の録音参加と今回のステージは分けてたどれる。

先行配信された「Two Of Us」は、この武道館公演での二人の歌唱を収めたものだ。公演当日は桑田69歳、竹内70歳。翌年、その歌唱が音源作品として届けられる。

2026年、ライブ盤とラジオへ

ライブアルバム『九段下フォーク・フェスティバル’25』は、CDと配信が2026年11月3日、アナログ盤が12月16日発売と発表されている。竹内と桑田だけのアルバムではなく、この公演の出演者による全29曲を収めるライブ盤だ。

発売に合わせて「桑田佳祐のやさしい夜遊び」でも、10月31日と11月7日の2週にわたる特別企画が告知された。竹内はコメント出演者の一人として案内されている。公式告知では、誰のコメントをどちらの週に放送するかは事前に明かしていない。

「蒼氓」で合わせた4人の声、「静かな伝説」で囲んだ一本のマイク、そして武道館で二人が歌った「Two Of Us」。作品と本人の話をたどると、長い付き合いが、その都度の具体的な共演として残されてきたことがわかる。今回のライブ盤は、その続きにある一枚として聴いてみたい。