2026年3月7日、両国国技館。「ギタージャンボリー」の初日を締めくくる後藤正文のステージに、岸田繁が登場します。二人が演奏したのは、それぞれのバンドの曲ではなく、Oasisの「Champagne Supernova」でした。

くるりとASIAN KUNG-FU GENERATION。それぞれの歌を作り、ギターを弾いてきた二人には、聴き手として共有する音楽があります。この一曲の共演へ向けて、まずは二人がオアシスについて語った言葉をたどってみます。

自分にも音楽ができると思わせたバンド

2024年11月8日、展覧会「リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展」の公式サイトが、岸田と後藤の対談動画を紹介しました。二人が話したのは、オアシスとの出会い、楽曲の魅力、展示を見て感じたことです。

公式の紹介文によれば、岸田がオアシスに出会ったのは高校生の頃。後藤は大学進学のため上京した頃で、最初に聴いた曲は「Live Forever」でした。後藤は、声に強く心を動かされたことに加え、手の届きそうなコードとメロディーが、自分も音楽を始められるという感覚を与えてくれたと振り返っています。

岸田も、ギターを弾くようになった理由の一つにオアシスを挙げています。シンプルなコードで作る歌に、ブルースの要素もある。その音楽を、ギターと歌の結びつきから捉えていました。

二人の話から見えるのは、憧れのバンドを遠くから眺めるだけでは終わらない聴き方です。好きな音楽が、自分でも弦を押さえ、曲を作ってみる入口になる。のちに自分のバンドを持つ二人が、ここでは同じバンドの聴き手として向き合っています。

相手が音楽を作る場所にも目を向ける

二人の接点は、好きな曲を語る場だけにありません。対談動画の紹介に先立つ2024年10月14日、APPLE VINEGAR -Music Support-の公式noteには、岸田の応援文と、それを受けた後藤の返答が掲載されました。

岸田が言葉を寄せたのは、静岡県藤枝市で進められていた音楽制作スタジオの計画です。地域で生まれる小さな創作を、録音の場が受け止める。その可能性に期待を寄せています。

後藤は返答で、くるりの活動を、個々の暮らしや土地に根ざしながら世界の音楽につながるものとして受け止めていました。そこで挙げた曲が「東京」です。相手の歌だけでなく、どこで、どのように音楽を続けていくかにも目を向けたやりとりが残っています。

この応援文や対談が、後の共演を直接決めたと示す資料はありません。それでも、共演の前に交わされた言葉を読むと、二人が互いの活動をどう見ていたのかが伝わってきます。

両国で選んだ「Champagne Supernova」

そして2026年3月7日。ギタージャンボリー初日の後藤の出番で、岸田とのセッションが実現します。

主催者J-WAVEの公演レポートには、後藤が岸田をステージへ迎え、Oasisの「Champagne Supernova」を演奏したことが記されています。岸田のギターソロに後藤の歌が重なり、演奏後には二人が握手を交わしました。

二人はともに1976年生まれ。くるりもASIAN KUNG-FU GENERATIONも1996年に結成されています。同じ時代に音楽を聴き始め、それぞれのバンドで歌を届けてきた二人が、この日は一つの曲を分け合いました。

対談で話していたのは、自分たちを音楽へ向かわせたバンド。その曲を今度は二人で演奏し、客席へ届ける。この日の「Champagne Supernova」は、岸田と後藤のつながりを、話す言葉と実際の音の両方からたどれる一曲です。