専門学校の先輩と後輩だった
永積タカシと原田郁子のつながりは、共作する前の専門学校時代に遡ります。2021年4月放送のJ-WAVE『WOW MUSIC』を紹介した番組記事によると、永積は原田の1学年上でした。
池田貴史も交えたこの鼎談で、原田は昔のライブ写真を持ち寄り、SUPER BUTTER DOGが結成されていく様子を間近で見ていたと振り返っています。ファンクの音楽を教えてくれたのも、その仲間たちだったそうです。互いのバンドが動き出す頃からの親交が、後の共作へと続いていきます。
一曲の録音から始まった
永積タカシと原田郁子は、それぞれハナレグミとクラムボン、そしてソロで歌を作ってきました。ここでは、2004年の「トゥインクル」から二人の共作を辿ります。
原田のソロアルバム『ピアノ』に収録されたこの曲は、原田が作詞し、永積が作曲しました。歌う原田へ、永積が旋律を手渡した作品です。
その録音には、Polarisのオオヤユウスケも参加していました。長く友人としてライブや録音で顔を合わせてきた三人が、同じ曲に揃ったことが、やがて新しいグループを生みます。
三人の名前から生まれたohana
オオヤの「オ」、原田の「ハ」、永積の「ナ」。三人は名前の頭文字をつなぎ、ohanaを結成しました。
2005年秋に結成し、朝霧JAMで初ライブ。翌2006年にはファーストアルバム『オハナ百景』を発表します。ここで永積と原田は、曲を提供する人と受け取る人ではなく、同じ名前を掲げるバンドメンバーになりました。
ohanaは三人の声を重ねるコーラスグループです。普段はそれぞれ別の活動をする音楽家が、誰か一人の伴奏者になるのではなく、三人の声そのものを中心に据えました。
「あいのこども」で、もう一度歌を手渡す
ohanaの後も、二人の共同制作は続きます。
2008年、原田の作品『気配と余韻』に「あいのこども」のdemo版が収録されました。作詞は原田郁子、作曲は永積タカシです。
「トゥインクル」と同じ役割の組み合わせですが、間にはohanaで同じバンドとして過ごした時間があります。最初の一曲からグループへ進み、そこで得た呼吸を持って、再び原田の歌へ永積が曲を渡しました。
同作の「やわらかくて きもちいい風」では、原田の詞に、永積と原田が共同で曲を付けています。作詞者と作曲者という境目も、少しずつ重なっていきました。
原田の言葉を永積が歌う「発光帯」
2021年、今度は歌を渡す向きが変わります。
ハナレグミのアルバム『発光帯』の表題曲で、原田が作詞を担当しました。作曲とサウンドプロデュースは、SUPER BUTTER DOG時代から永積と活動してきた池田貴史。原田の言葉を、永積がハナレグミとして歌っています。
2004年の「トゥインクル」では、永積が書いた曲を原田が歌いました。「発光帯」では、原田が書いた言葉を永積が歌います。二人の間で、言葉と旋律と声の役割が反転しました。
役割を交代できる友人たち
「トゥインクル」、『オハナ百景』、「あいのこども」、「発光帯」。順番に辿ると、永積タカシと原田郁子は、作曲者と歌い手、同じバンドのメンバー、そして作詞者と歌い手へ役割を変えてきました。
一方がもう一方を一度だけ支えた関係ではありません。歌を渡し、三人で声を重ね、年月を経て逆向きに言葉を返す。互いの表現を知っているからこそ、その時の作品に必要な場所を自然に交代できる。その柔らかな共同制作が、二人のつながりです。