三人で書いた「月ひとしずく」

1994年11月、小泉今日子はシングル「月ひとしずく」を発表しました。詞を書いたのは小泉今日子、井上陽水、奥田民生の三人。曲は井上陽水と奥田民生の共作です。

歌い手が完成した曲を受け取るだけではなく、言葉を書く側にも加わっている。小泉と奥田の最初の接点として見えるのは、一方向の提供ではなく、複数の作者が一曲へ持ち寄る制作でした。

言葉と旋律の境界を越える

同じ三人でも役割は均等ではありません。小泉は歌唱と作詞、奥田は作詞と作曲を担っています。井上陽水を含む共同作業の中で、小泉の言葉と奥田の旋律が同じ曲に置かれました。

クレジットを人物ごとに分けて見ると、「共作」という一語の内側に、誰がどの領域へ参加したのかが見えてきます。

二年後の「オトコのコ オンナのコ」

1996年10月、小泉は「オトコのコ オンナのコ」をシングルとして発表します。奥田民生の公式ディスコグラフィーには、小泉今日子への提供曲として、奥田が作曲したことが記録されています。

「月ひとしずく」では三人の共作だった関係が、ここでは奥田が曲を書き、小泉が歌う形へ変わりました。二つの作品を並べることで、一緒に書くことから、旋律を託して歌ってもらうことへの変化がわかります。

小泉今日子を通って伸びる線

小泉今日子の周囲には、宮沢和史が提供した「モクレンの花」や「ピアノ」、小泉の詞に大橋好規が曲と編曲を施した「恋する男」「あなたと逃避行」があります。

そこへ奥田民生の二曲が加わると、小泉は異なる作り手から歌を受け取るだけでなく、ときには自ら詞を書き、共同制作へ入る人物として見えてきます。

高橋幸宏から堀内一史、ユニコーンの奥田民生を経て小泉今日子へ。遠く見えた二つの枝は、「月ひとしずく」と「オトコのコ オンナのコ」で一つの回遊路になりました。