バンドの外へ出たEBI

1991年8月23日、ユニコーンのEBIこと堀内一史が、ソロアルバム『MUSEE』を発表しました。ユニコーンの公式年表では、同年6月の「ブルース」と9月の『ヒゲとボイン』の間に置かれています。バンドが活動を続けるなかで、自分の声と曲を別の音楽家たちに預けた作品でした。

そこで「八月の漂流者」と「十九回目の普通」の編曲を担ったのが、高橋幸宏です。さらにアルバム全体へ目を向けると、ムーンライダーズのメンバーも制作に加わっていました。

ムーンライダーズも加わった「美術館」

制作を担当した今泉雅史は、後年の回想で、ユニコーンのメンバーのソロ制作を手伝う話からEBIを担当することになったと説明しています。目指したのは、ヨーロッパの退廃的な美しさとニューウェーブを結びつける方向でした。

今泉が参加者として挙げるのは、高橋幸宏に加え、ムーンライダーズの鈴木慶一、岡田徹、かしぶち哲郎、白井良明、鈴木博文、そして作詞の森雪之丞です。『MUSEE』という美術館を意味する題名にも、作品を一つの美意識でまとめようとする意図があったと振り返っています。制作担当者の回想からは、EBIのソロを囲む作り手たちの広がりが見えてきます。

その接点は曲のクレジットにも表れています。冒頭の「デカダンスの虹」は、森雪之丞の作詞、堀内一史の作曲、鈴木慶一の編曲。続く「八月の漂流者」では、作詞・作曲の組み合わせを保ちながら、編曲が高橋幸宏へ交代します。同じ歌い手のアルバムの中で、編曲家から編曲家へ音作りのバトンが渡っていくのです。

高橋幸宏が編曲した二曲

「八月の漂流者」は『MUSEE』の2曲目、「十九回目の普通」は8曲目に収められています。どちらも作詞は森雪之丞、作曲は堀内一史、編曲は高橋幸宏です。

ここで分けて見たいのは、曲を書く役割と、編曲する役割です。二曲の旋律を書いたのは堀内であり、高橋は編曲を担当しています。「高橋幸宏が参加した」という一言を、誰の曲に、どの役割で関わったのかまでほどくと、二人の接点が具体的になります。

アルバムでは二曲が離れて配置され、その間には別の曲が続きます。まず2曲目を聴き、アルバムを進めてから8曲目へ戻ってくる。その順番で聴くと、高橋が担った二曲を、一枚全体の中で聴き比べることができます。

後年の選曲から、元のアルバムへ

2007年発売の『EBI セルフセレクション』では、ユニコーンの「ペケペケ」に続き、「デカダンスの虹」「八月の漂流者」「十九回目の普通」が並びます。『MUSEE』では離れていた高橋編曲の二曲が、この選曲では隣り合っています。

選曲盤から二曲を知り、元のアルバムへ戻ると、そこには鈴木慶一をはじめとするムーンライダーズの面々との接点もありました。EBIの声を入口に、堀内の作曲、高橋の編曲、さらに周囲の作り手へと聴く範囲を広げていける一枚です。