秦基博が書いた歌詞を、草野マサムネが歌う。草野が書いた歌詞を、秦が歌う。

二人の共作曲「ringo」では、1番にそんな歌い分けがあります。10代の頃からスピッツを聴いてきた秦が、今度は草野と一曲の言葉を作り、互いに渡して歌う。二人のつながりは、作詞のクレジットだけでなく、歌う役割にも表れています。秦が語る歌詞の共作と歌い分け

スピッツを聴いていた頃から

秦は、スピッツを聴き始めた時期を中学生の頃と振り返り、「ロビンソン」「涙がキラリ☆」「チェリー」を挙げています。特に惹かれていたのが、草野の書く歌詞でした。秦本人のインタビュー

2006年11月、秦はシングル「シンクロ」でデビューします。その後はスピッツの主催イベントにも出演するようになりました。「ロックロックこんにちは!」をはじめとする場で接点を重ね、やがて自分のアルバムで共作を依頼することになります。秦の公式プロフィールイベント出演から共作への経緯

長く音楽を作り続けるスピッツへの憧れと、草野と作ったらどんな曲になるのかという興味。秦は、その両方から声をかけたと話しています。依頼について語ったインタビュー

二つのデモから選ばれた「ringo」

秦が草野に送ったのは、二つのデモ音源でした。そのうちの一つが「ringo」になります。作曲を担当したのは秦。JOYSOUNDの作品情報には、作詞者として秦基博と草野正宗、作曲者として秦基博が記載されています。デモと作曲についての放送後記作詞・作曲クレジット

当初、秦が考えていたのは、自分が作った曲を草野に歌ってもらうことでした。ところが話を進める中で、歌詞も一緒に書けることになったのです。スピッツ公式は、草野にとってフィーチャリングではない他アーティストとの楽曲共作は初めてだと紹介しています。秦の制作回想スピッツ公式の発表

メールで届く、歌の続き

歌詞作りは、メールのやり取りで進みました。まず秦が1番のサビを送り、草野が曲の最初の部分を書く。相手から届いた言葉を受けて、一曲を形にしていきます。秦自身がこの作業を文通にたとえたことは、JFNの番組後記にも残っています。FMヨコハマの放送後記JFNの番組後記

そうしてできた歌詞を、1番では互いに交換して歌います。自分の言葉が相手の声になり、相手の言葉を自分の声で届ける。秦は草野の歌入れにも立ち会い、自分の書いた歌詞が歌われることに、感動と不思議な感覚を覚えたといいます。歌い分けについての本人説明録音時の回想

「ringo」を聴くときには、最初の歌い出しからサビまで、声の交代に耳を向けてみたくなります。その言葉を書いた人と、今歌っている人が違う。制作のやり取りを知ると、二人の声が重なるまでの過程も想像できます。

甘さだけではない、りんごの歌

タイトルのもとになった「りんご」は、制作当初の仮題でした。秦によれば、かわいらしさや酸味、毒リンゴの物語など、一つの果実にいくつものイメージがあることが発想につながっています。鋭さと優しさの両方を含む曲を考え、仮題を生かすことになりました。タイトルに込めた発想

FM大阪の番組後記でも秦は、恋の浮き立つ気分だけでなく、いびつさも二人で歌いたかったと話しています。憧れの相手との一曲に選んだのは、そうした複数の表情を持つ恋の歌でした。楽曲についての本人発言

「ringo」は2024年11月6日に先行配信され、同月20日発売の『HATA EXPO -The Collaboration Album-』に収録されました。公式リリース情報

スピッツの歌を聴いていた秦が、自分で書いたサビを草野に送る。そして、草野から届いた言葉を歌う。「ringo」には、好きな音楽を作る人と、実際に一曲を作っていく手順が残っています。

秦のもう一つの共作を辿るなら、「KANタービレ」に集まった音楽家たちへ。KANとの「カサナルキセキ」が、追悼公演でどのように歌われたかを紹介しています。