「サヨナラCOLOR」の現場から生まれた歌
高野寛と原田郁子のつながりを辿る最初の作品は、2005年の「サヨナラ オハヨウ」です。
映画『サヨナラCOLOR』から生まれたセッションアルバムには、ハナレグミ、クラムボン、ナタリー・ワイズの音楽家たちが集まりました。その最後に収められた「サヨナラ オハヨウ」は、高野寛、原田郁子、永積タカシが言葉を書き、高野が曲を付けた歌です。
別々のバンドやソロ活動を持つ三人が、一曲のなかで作詞者として並びました。既存の記事で辿ってきた高野と永積、永積と原田という二本の線が、この作品で一つにつながります。
サヨナラとオハヨウの間
高野は後年、この曲を紹介する際、原田との二人名義で歌っています。タイトルにある「サヨナラ」と「オハヨウ」は、終わりと始まりを分ける言葉でありながら、同じ歌の中に置かれています。
三人で作った言葉を、高野と原田の声が受け継ぐ。共同制作は、その場限りの記録ではなく、歌うたびに関係を結び直す作品になりました。
二人で歌った「終りの季節」
2007年、『細野晴臣トリビュート・アルバム』で、高野と原田は「終りの季節」をカバーしました。二人が一緒に歌い、コーラスにはハナレグミが参加しています。
ここでは二人とも、誰かの曲を受け取る歌い手です。「サヨナラ オハヨウ」では言葉と曲を作る側だった二人が、細野の歌に声を重ねました。
さらに永積の声が後ろから加わることで、三人の関係は別の作品にも残ります。一曲ごとの名義は変わっても、同じ音楽家たちが役割を入れ替えながら集まっていることがわかります。
高野の歌に入った原田のピアノ
2009年、高野のアルバム『Rainbow Magic』に「CHANGE」が収録されました。原田はピアノとボーカルで参加し、高野とのツインボーカルを担いました。
共作からカバーへ進んだ二人が、今度は高野のソロ作品の内側で向き合います。原田は客演の歌声だけでなく、鍵盤奏者としても曲の音を形作りました。
作詞、作曲、歌唱、演奏。二人を結ぶ役割は作品ごとに増え、単純な「共演者」という言葉では収まりにくくなっていきます。
離れた場所から重ねた二人の声
2020年5月、田中知之の「Change the World Again」が配信されました。ボーカルは高野寛と原田郁子です。
人が同じ場所に集まることが難しくなった時期に発表されたこの曲で、二人は再び声を並べました。同年3月には、レコーディングスタジオから配信する企画「新生音楽」の第1回にも、二人で出演しています。
15年前に三人で歌を書いた関係は、時代と発表方法が変わっても続いていました。
関係を閉じるのではなく、輪にする
「サヨナラ オハヨウ」、「終りの季節」、「CHANGE」、「Change the World Again」。四つの作品には、共作する人、同じ曲を歌う人、ソロ作品へ参加する人、離れた場所から声を重ねる人という異なる姿があります。
高野寛と原田郁子を結ぶ線は、永積タカシを含む三人の共同制作から始まりました。そして二人の共演へ形を変えながら、また別の音楽家や作品へ開かれていきます。つながりを二人の間に閉じず、周囲へ広がる輪として残してきたことが、この関係の魅力です。