映画『言の葉の庭』で「Rain」を知り、秦基博の曲だと思って聴いていた人もいるかもしれません。エンディングに流れる声は秦ですが、作詞・作曲を手がけたのは大江千里です。映画の公式クレジット
大江のアルバムに入っていた一曲が、約25年後、秦の声でアニメーション映画へ。原曲とカバーの間には、曲を受け取った歌い手が、物語に合わせて音を作っていく過程があります。
アルバムの中で生まれた「Rain」
大江の「Rain」が収録されたのは、1988年7月21日発売の7枚目のアルバム『1234』でした。当初から「Rain」というシングルとして世に出た曲ではありません。『1234』の発売日を振り返るインタビュー・原曲の収録とシングル化についての公式記録
映画からこの曲に出会った耳で原曲へ戻ると、同じ言葉とメロディが、別の声で聴こえてきます。どちらを先に知ったかによって、カバーは原曲への入口にも、聴き慣れた曲をもう一度聴くきっかけにもなる。その行き来を楽しめる一曲です。
秦は、依頼を受けてこの曲に出会った
秦は制作当時のインタビューで、依頼されるまで「Rain」を知らなかったと話しています。映画のエンディングを歌う話とともに、イメージソングを書き下ろす話も進みました。秦が振り返る制作の始まり
大江の曲に触れた秦が注目したのは、言葉がメロディに乗る独特のリズムや転調でした。先にある歌をそのままなぞるのでなく、自分ならどう歌うかを考えたといいます。原曲の魅力と歌い方についての本人説明
同じ一曲を歌っていても、書いた人と、後から出会った人では立っている場所が違います。その違いがあるからこそ、二つの声を聴き比べたくなります。
映画の終わりに、どんな感情を残すか
『言の葉の庭』は、雨の日に出会う二人を描いた新海誠監督のアニメーション映画です。公式のスタッフ欄には、劇伴の音楽を担当したKASHIWA Daisukeとは別に、エンディングテーマ「Rain」の大江と秦が記されています。映画の作品紹介とスタッフ
秦は編曲の皆川真人と、悲しさに寄りすぎず、少し晴れやかな感情を残す音を目指しました。自身でアコースティックギターも弾き、監督が結末に込めた気持ちを届けようとしたと語っています。映画に合わせた音づくり
秦の「Rain」は、2013年5月29日発売のシングル『言ノ葉』に収録されました。通常の「Rain」の編曲は皆川真人。同じ盤には、皆川と多田彰文が編曲に記載された「Rain(Long Ver.)」も収録されています。公式ディスコグラフィー・版ごとのクレジット
受け取った歌と、自分で書いた「言ノ葉」
同じシングルの表題曲「言ノ葉」は、秦が作詞・作曲・編曲したイメージソングです。大江の曲を歌う「Rain」と、自分で書いた「言ノ葉」。秦は一つの映画に、二つの立場から音楽を届けています。シングルの公式紹介・制作クレジット
一方、大江の「Rain」もその後に続きがあります。2022年5月25日、原曲は発表から約34年を経て初めてシングル化されました。その7インチ盤には、2018年の『Boys & Girls』に収められたジャズ版も組み合わされています。シングル発売の公式告知・レーベルによる収録内容の案内
アルバムの中の一曲へ戻る。秦の歌から映画を思い出す。大江自身の別の演奏へ進む。「Rain」は、どの声から入っても、その先の音楽へ辿っていける曲です。
大江が別の歌い手へ渡した曲を辿るなら、渡辺美里との「10 years」から続く音楽へ。秦が作り手同士で言葉を交わした一曲は、スピッツ・草野マサムネとの「ringo」で紹介しています。