山崎まさよしのアルバム『STEREO 3』には、「斉藤さん」という曲が入っています。タイトルを見て、誰のことだろうと思った人もいるかもしれません。その名前の主は、斉藤和義。二人を結ぶ糸は、ステージでの共演と、音楽の外にも広がるものづくりの楽しさです。

DIY好きが、曲の名前になった

2021年9月22日発売の『STEREO 3』。全10曲のうち、7曲目に「斉藤さん」が収められています。山崎のデビュー25周年イヤーを締めくくるアルバムでした。発売日と収録曲はレーベル公式情報で確認できます。

曲の背景について、山崎は『LEON』のインタビューで、斉藤和義をモデルにしたこと、二人ともDIYが好きで、何かに夢中になる楽しさを歌にしたことを説明しています。棚を作る、楽器を作る。普段ステージで見る音楽家の姿から、手を動かして楽しむ日常へと視線が移る一曲です。山崎本人の説明を読むと、短い曲名の向こうに、二人の共通点が見えてきます。

命名には、もう一つ経緯がありました。『Rolling Stone Japan』の取材によれば、ギターも自作する斉藤を思い浮かべて付けた仮タイトルが、仕上げるうちになじみ、そのまま正式な曲名になったといいます。斉藤本人にも許可を得た、と山崎は話しています。命名についてのインタビュー

「斉藤さん」という、いつもの呼びかけのような名前。そこには、相手の好きなものを知っているからこそ生まれる親しさが感じられます。

一人で音を重ねる『STEREO 3』

『STEREO』シリーズは、山崎自身が作詞・作曲から歌唱、楽器演奏までを広く手がける作品群です。『STEREO 3』についても、本人はほとんどの楽器を自分で演奏したと語っています。一人で判断しながら音を作る時間と、人と意見を交わしながら作る時間。その両方を続けてきたことを、山崎は活動の長さと結びつけて振り返っています。制作についての本人インタビュー

「斉藤さん」の作詞・作曲・編曲は、いずれも山崎将義名義です。曲別クレジットにも、その名前が並びます。山崎が作り、歌う一曲のタイトルに、斉藤の名前が残りました。一緒にステージに立つことに加え、相手のものづくりの姿が歌のきっかけになる。そんな音楽家同士のつながり方もあります。

石狩の夜、「四人の侍」として

二人の共演をたどると、2011年の「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」に行き着きます。Char、奥田民生、山崎まさよしの「三人の侍」に斉藤和義が加わり、「四人の侍」として出演しました。フジテレビの番組紹介にも、この共演が記録されています。

CharのZICCA公式告知にある出演枠は、8月13日のSUN STAGE、24時10分から25時10分。暦の上では翌14日の未明に当たります。四人の名前が並ぶその記録からは、「斉藤さん」の発売より10年前、二人が同じステージに立っていたことが分かります。出演日時と四人の構成

共演の記録を知ってから、あらためて「斉藤さん」という曲名を眺める。ステージをともにした相手を、日常の好きなことから歌にする。その距離感が、この二人をたどる面白さです。

山崎まさよしから、次の共演へ

山崎が誰かと音楽を持ち寄る場面は、ほかの記事からもたどれます。「KANタービレ」に集った音楽家たちでは、佐藤竹善と歌う「カレーライス」や、馬場俊英との「ロックンロールに絆されて」を紹介しています。

「四人の侍」で一緒だった奥田民生へ進むなら、矢野顕子との「Beautiful Songs」へ。それぞれの曲を持つ音楽家たちが集まるとき、普段とは違う組み合わせが生まれます。曲名の「斉藤さん」から、二人の共演へ、さらにその仲間の歌へ。ここからも、次の音楽につながっています。