シンセサイザーの音から、ギターの人へ

TM NETWORKの「Self Control」を聴くとき、まず宇都宮隆の歌や、シンセサイザーの響きが浮かぶかもしれません。その録音を支えた人へ目を移すと、佐橋佳幸の名前に出会います。

TMの音を組み立てた小室哲哉と、ギターで参加した佐橋。二人がスタジオでどのように音を探したのか。今回は、1987年のアルバム『Self Control』を入口に、その接点を辿ります。

1987年2月、同じ名前を持つシングルとアルバム

「Self Control(方舟に曳かれて)」は1987年2月1日発売。その25日後、2月26日に4枚目のアルバム『Self Control』が発売されました。ソニーの公式年表で、二つの発売日を確認できます。

アルバムは全10曲。表題曲は「Bang The Gong」「Maria Club」「Don't Let Me Cry」に続く4曲目で、終盤には木根尚登の作曲した「Fool On The Planet」も収められています。表題曲から一枚へ聴き進めると、TMという三人組の音楽を、より広い範囲で味わえます。

なお、現在のソニーの作品紹介に表示される2007年3月21日は再発盤の日付です。ここで辿っているのは1987年の録音です。

渡辺美里の制作現場が、二人の接点だった

佐橋は能地祐子による本人取材で、小室との接点として渡辺美里の仕事を挙げています。佐橋が初めて参加した渡辺の曲「きみに会えて」は、小室の作曲でした。TMへの依頼の背景にも、その現場のつながりがあったのではないか、と本人は振り返っています。

同じ歌手の作品に関わった作曲家とギタリストが、別の録音で顔を合わせる。作品の名義を越えて、人の仕事が次へつながっていくところに、この二人を辿る面白さがあります。

リズムを足し、音の響きを試す

同取材で佐橋が説明するTMのセッションでは、小室が望む音のイメージを示し、佐橋がギターの案を出していました。エンジニアの伊東俊郎と効果を試すこともあり、佐橋は自分らしい演奏を受け入れてもらえたと語っています。

ギターというと目立つソロに耳が向きがちですが、ここではリズムを支える仕事にも注目したいところです。シンセサイザーとギターが同じ曲の中で、どのように動いているのか。演奏者の名前を知ると、それまでひとまとまりに聴いていた音を、少し違う角度から聴き直せます。

制作を見ていた人の証言も重ねる

当時の制作を知るディレクター、山口三平への公式インタビューも、この時期を考える手掛かりです。山口は『GORILLA』で取り組んだ音作りが、『Self Control』でより洗練されたと振り返っています。

また、表題曲の歌詞を作る過程では、小室みつ子と小室哲哉のアイデアの交換があったとも説明しています。作詞は小室みつ子、作曲・編曲は小室哲哉。歌詞と曲、演奏と録音。それぞれを担う人の仕事が重なって、一つの作品になっています。

ただし、佐橋の取材ではアルバムに曲別クレジットがないことにも触れられています。本記事では、本人が説明するアルバムへの参加と制作のやり取りを扱い、表題曲の特定のフレーズを佐橋の演奏と断定することは控えます。

佐橋から槇原へ、小室から浜田へ

この先も、二人の仕事から別の歌へ進めます。

佐橋がスタジオで提案したギターをさらに辿るなら、槇原敬之「もう恋なんてしない」の記事へ。小室の作曲・編曲が別の歌い手と出会う場面なら、浜田雅功とH Jungle with tの記事へつながります。

渡辺美里を接点に広がる仕事は、大江千里との記事からも辿れます。よく知るTMの一枚に、参加した音楽家の名前を重ねてみる。それが、次の一曲を選ぶきっかけになるかもしれません。